箱庭センチメンタル



小首を傾げてみせる私に、何を勘違いしたのか彼は慌てて首を振る。


「あ、いやっ、親が仕事で家出てて実質一人暮らしっつーか、部屋余ってるから行くとこないならどうかって思っただけで、変な意味は………な、ないからな!」


「はい、存じております」



私が気遣わないようにか、至極丁寧に説明してくれているのは分かる。


が、こうもまくし立てるように言われると、事実でもどこか言い訳のように聞こえなくもない。


ついで、気になる点がひとつ。


「そちらに関しては心配の限りではないのですが……あの、今の間は何でしょうか?」


「……っな、なんでもない!」



途中の吃音が気になって聞いてみたけれど、逸らされてしまった。



もしやこれは、詮索という括りになるのだろうか。


聞いてはいけないことだったのかもしれない。


そうだとしたら、ひどく不躾なことをしてしまった。


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