S系御曹司と政略結婚!?


どうやら私の苦しむ姿は、ヤツにとって“極上の蜜の味”らしい。

私にとっては苦い味の新婚生活が始まって早2週間。毎晩気が休まる時が見当たらないでいる。

いかにして魔の手から逃れるかに必死なせいで寝不足に陥っていた。

お風呂の湯に浸かっていると、うつらうつらとしてしまう。瞼が重く感じるのだから、相当眠いのかも……。

すぐに気づいてパチッと目を開く。危ない、バスタブで眠っちゃうトコだった……いや、眠ってたのかも。

慌ててお風呂から出た私はそのまま自分の部屋に直行。自室のドアを開けて入室し、すぐに内側から鍵をかけた。

好き合っているわけでもないので、私たちはそれぞれの部屋を持っている。もちろん鍵付きなので、これでもう平和は保たれる。

「なんだ?さらに密室化するとか相当マニアックだな、華澄」

「……え」

ドアを閉めることに夢中で室内を見渡さず、まったく気づかなかった。

私が獄中内で唯一のオアシスと呼べる、キングサイズのベッドがひとりの男に占領されていた事実に。

「なっ、なんで!?」

鍵を開けて逃げ出すことも忘れ、おののいていると、ベッドで寝転んでいたヤツが起き上がってこちらを見ながら口にする。

「誘っても逃げるウブな奥さんだし、優しく調教してもいいけど?」

断固拒否の言葉も出ず、必死で頭を振り続ける。そんな私の元へ悪魔が色香を放ちながら近づいてきた。

あれ、なんかフラフラする……?頭を振りすぎたのか、頭がクラクラして足下が覚束なくなる。

「華澄っ!?」

驚いた声で呼ばれたのを最後に、私の意識は薄れていった。


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