S系御曹司と政略結婚!?
「……ウソだろ?」
それに首を横に振って否定した。私の発言に大きく目を見開き、呆然としている。
当たり障りのない話をする中で職業を教わったら、江川先生が所属する会派に所属する中堅議員の公設秘書だそう。
だから、あれほど挨拶回りをしたはずの私の結婚について知らなかったのかも。
「だ、誰だよ!?相手って」
何度も問い質してくるけれど、そこまで伝える義務はないよね。
答えずにいる私に近づいて両肩を掴むと、また問い詰めようとする。
一連のやり取りによって、彼にすっかり興ざめしていてた。もっとスマートだったはずだけど、と。
再会には驚かされてしまったけど、今は面倒くさい一心で彼から逃げたくて仕方ない。
「華澄、相手は誰だよ!」
あまりの必死さとしつこさで煩わしくすら感じてしまう。肩を揺すられながら詰問にイライラし始めたその時。
「それ、俺のことだけど?」
突然話に割り入るようにしてヤツが現れ、光希から私のことを引き離してくれた。
これでようやく自由の身……なんて安堵感は、代わりにヤツの腕が腰に回ってすぐに終了。
ヤツに抗議しようとしたが、苛立ちを全く隠さない男が光希を睨みつけていて口に出せず。
「許可なく人のモノに手を出すんじゃねーよ!」
悪魔の暴言を吐き捨てたヤツは私を道連れに歩き始めた。