S系御曹司と政略結婚!?


答える前にエレベーターが目的階で停止し、ようやくそこで解放される。

部屋に入るまで私は無言を貫き、ただヤツのあとを俯き加減でついていった。

こんな空っぽの夫婦関係で自分語りをする義理もない。まして、意味もないじゃない。

自宅に到着すると、そのまま私室に向かう。内側から鍵をかけた私はドレス姿のままでベッドに傾れ込んだ。

シンと水を打ったように静かな空間に、はぁと重い溜め息をひとつ落とす。

パーティー自体好きじゃないけど、それでもこんなに疲れない。

超自己中“S”なヤツは前提として。元カレの光希が理由の大半を占めるのかも。

もう会うことは無いと思ってたから、再会した瞬間はすごく動揺した。だけど、かつて想像してたよりも普通に対応出来た。

二度と会いたくないって思うくらい傷ついたのに、今日会ったら錯乱するほどでもなくて。

むしろ彼のことを子供っぽく感じたのだ。強く掴まれたせいで手首に出来てしまった痕に視線を向ける。

こちらの意思も聞かず、怒り任せの態度が際立って幻滅したのかもしれない。


外側に出来た傷はいずれ治ってしまう。でも、ずっと癒えなかった心の痛みを持ち続けていたはずなのに。

確かにかつての古傷は痛んだけど、強がりでもなく淡々としている今の自分がにわかに信じられない。

時間が癒してくれたの?それとも、私の中で何か変化でもあったの……?


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