S系御曹司と政略結婚!?


「ああ言えばこう言うな」

はぁ、と嘆息が頭上から落ちてきた。いえ、そっくりそのままお返ししますが。


『やっと手に入れた』この意味も、厳しい主人に懐いたペットは手離さないということで。

普通だったら甘言に取れるかもしれない。私だって少しはポジティブに受け取りたいけどね。

私たちは普通とは違う関係。——あくまで政略結婚だから。

良い方に解釈すれば馬鹿をみる。“S”の本領発揮に一役買うだけ。そんな結末、馬鹿の私でも簡単に分かるわよ。

どこまでも良縁に恵まれない人生みたいだ。これは女難ならぬ、男難の相なのかもしれないね。

……現世はもう諦めたから、来世では平凡で幸せな結婚が出来る人生を願おう。


「アホ、ひとりで悲劇のヒロインぶるな」

悲嘆に暮れていたところに、ドスの利いた声が割り入って来た。

「オマエ、抱き締められてることも忘れてねえ?ついでに、喜劇のヒロインなら似合うぞ」

「失礼なっ!妄想するしかない女の気持ちも知らないくせに……!」

「ふーん、ご愁傷さま」と、こちらの主張も一蹴してしまう。


今夜は妄想世界の中だけでも自分自身を慰めてあげよう。悪魔なヤツのせいだ……!


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