S系御曹司と政略結婚!?
裏切られていたのか、騙されていたのか。どちらが正しかったのか知ることはもうない。
始まりが突然であるように、終わりも予期出来なかったから。
共通の友達だった、亜衣(アイ)ちゃんと光希がベットで抱き合う姿を見るまで……。
忘れ物を取りに彼のアパートに合鍵で入ったら、バイトに行っているはずの彼の部屋から声が聞こえて。
間の悪い私はその浮気現場に踏み入ってしまったのだ。
「光希……ど、うして亜衣ちゃんが?何、してるの?」
声を震わせながら尋ねると、光希はベットから裸のまま出てきた。まだ途中だったことが態度からも窺える。
いつも笑顔の絶えないその顔も、今は鬱陶しさが前面に押し出ていた。
「ったく、ここでヤるって聞かねえ亜衣のせいだろ。今まで完璧だった計画もパアじゃねえか。
つーか華澄、俺がお前のこと好きとか本気で信じてんの?」
ベッドの中の亜衣ちゃんを面倒くさそうに一瞥し、こちらに視線を戻した彼は私を嘲笑していた。
「……え?」
その姿は私の知る彼とは全くの別人で、蔑むような視線が心に突き刺さる。
「ハッ、んな訳ねーだろ?目立つから声掛けたけど、中身は勉強大好きなつまんねぇイイ子ちゃん。で、抱いてみれば、いつまで経ってもマグロ。
まあ、大金が手に入るんなら騙して結婚まで持ち込むかと考えたけど、止めた。——華澄はもう用ナシ!」
これは浮気じゃない、私のほうが初めからお金と外見目当てのお遊び。
受け入れがたい言葉の数々に呆然と立ちつくす私を、彼はまるで面白いものでも眺めるように笑っていた。