陰にて光咲く



2回目のコールでアズマが出た。


『アズマ?今LINE見たけどあれさ…』


『おい、どーゆうことだよ?』


ーえ…?


『昨日、毎日拓夢の家行くって約束したじゃねーか!なんで家にいねーんだよ?』


こんな荒い口調のアズマは初めてだ。


本当に電話の相手はアズマか?


唖然としてしまい、言葉が出てこなかった。


『おい、拓夢⁉︎』


通話口からのアズマの怒鳴り声で我に帰る。


『わ…悪かった。今日は大学の連中と朝まで飲み会だったからさ…』


『大学の?』


『だからごめん!今日は帰れねーんだ。明日なら平気だから…』


しばらく沈黙が続いた後、再びアズマの声が聞こえた。


『そこに…さおりって子もいるの?』


『いや、さおりはいねーけど』


『わかったよ、なら許す!その代わり明日は絶対な』


その言葉に一先ず胸をなでおろした。


アズマとの電話を切ると、一気にため息が出た。


あの毎日来るって話、マジだったのかよ…


てっきり冗談だと思ってたのに。



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