陰にて光咲く
気のない姿でドアを開けてトイレから出ると、そこにはさおりが立っていた。
「どうした?」
「拓夢、スマホ失くしたんじゃなかったの?今、誰かと電話してたよね」
バレてしまった。
今の会話も聞かれていたはず。
「ねえ、やっぱり何かあったんでしょ?私には隠さないで正直に言ってよ」
さおりは俺のシャツを引っ張って問い詰めてくる。
嘘がバレてしまったからには、さおりに本当のことを話す覚悟を決めた。
アズマから異常な程に付きまとわれていること。
アズマ以外の連絡先を消されたこと…
さおりは現実ではありえないような話に、戸惑いを隠せずにいる。
「そんなの普通じゃないよ…」
やはり、さおりも健太と同じ意見だ。
これが普通の反応である。
「悪いけど、俺行くな。今日はごめん」
「行くってアズマ君のところに?やめなよ!絶対ひどい目にあうから」
さおりの制止を振り切る。
「そうだけど、あいつキレたら何するかわからねーんだ。もしかしたらさおりにまで危害が回るかもしれない。だから行かなきゃまずいんだよ」
俺は上着を羽織ると玄関まで言った。