夜の甘やかな野望



「お互い、悪かったんじゃない?
 俺の方も、仕事にいっぱいいっぱいで、碧さんに対して余裕が無かったし。
 碧さんも何も言わないで、限界になって、ただ出ていくだけだったし。
 わがまま言って、って前から言ってるのに。
 まあ、気づけると自分の能力を過信していた、俺も悪いけど。
 本当に、ね。
 本当に」


空が落下したと思った。


最後は静かな呟きだ。


聞き取れなかったのだろう。


伺うような碧の視線を感じて、苦笑になる。


「あなた、自分を過小評価しすぎ」


何のことかわからないらしく、眉をひそませている。


うろんな眼差し。


それもたまらなく好きだ。


ふふふんっと宗雅は口元で笑いながら、家への道をひたすら飛ばしていた。
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