エースとprincess
合コンのメンバーは先に到着していた。不参加の人が数名いるようだけど、もう顔さえ思い出せなかった。
「カラオケとボーリング、行きたいほうに混ざってくれる?」
数年前にできた複合型レジャー施設だった。他にもバスケットボールコートやフットサルコート、ゲームセンター、ゴルフの練習場の設備などがあった。私もできたばかりのころに何度か来たことがある。
亀田さんのニ択を受けて、手招きしているアキちゃんのほうに行こうとしたら、さっきまでメシメシ言っていた人のほうが行動が早かった。
「あ、バッティングセンターもある。姫ちゃん、あっち行こ?」
「え、私はアキちゃんとボーリングがいいかなあ、なんて」
「あの子、同じ会社なんでしょ? また今度行きなよ」
やんわりとではあるけれど、私、ノーの意志は表明したよね? なのにサワダさんてばまるで無視してぐいぐいくる。メシいらないでしょ。カロリー足りてるじゃん。頭、充分動いてるじゃん。
オーディエンスも積極的なサワダさんの味方みたいで、好き放題言っていた。
「いいぞーもっとやれ!!」
「見えないところでもっとやれ!」
「てゆーか、もうおまえらどっか行け」
「そうだそうだ。なんで戻ってきたんだよ。あのまま消えとけよ」
「えーでも彼、今日一番のイケメンだし」
「だよね。せめて連絡先寄越せって話」
「終わったらこっちにも来てね〜」
「バカ野郎。終わったらとか、終わったらとか、んな破廉恥なこと……!」
「えー、沢田くんやらしい!」
「そうだ。やらしいぞ!沢田くん!」
バッティングセンターくらいなら、と取りあえず誘われるままついていく。思ったことはふたつあった。
この人が一番のイケメンだったのか! ってことと、あっちの人がサワダさんならじゃあこの人は誰やばい名前わかんない! ってことだった。
「イケメンだから許されるんだよねー、ああいうのって」
そんな言いたい放題オーディエンスの声を背中で聞けば、脳内補正もかかる。他の人の目にはいい男として映っているらしいから、どこかに連れ込む意図はなかったのかも。私となかよくしたいだけだったのかも……。