エースとprincess
 ええっ、とか、いるのー、とか、適当に相づちを挟んでいた周囲の人達もざわめいた。


「いちゃ悪いんですか」
「案外、ひとりに縛られずに遊んでんじゃないの?」
「相手は誰」
「どんな子」
「どうせ年下だろ」
「そう思いきや年上だったりして」
「いっそ未成年とか」
「女子大生とか」
「ギリギリ二十代ならお友達紹介してって彼女に言っといて」
「タクさんまじすか!?」
「またですか」
「まだ懲りないんですか」
「タクさんにたくさんの紹介……」
「誰、今、場の温度下げたヤツ」

 キャーと盛り上がる面々。一応断っておくけど、この騒ぎ立てる会話に私は混ざっていない。今のうちにと生ビールを飲み干す。


「でも、あれだね。姫ちゃんと組んでるし」

「結婚はしばらく先延ばしにしたほうがいいよね」

「姫ちゃん、って、姫里のこと?」

 端のほうに座る女性社員が気になる発言をしたので、谷口主任はそちらと私とを交互に見やる。

「あー、そうかも」
「かもってなに? 自分のことでしょ」

 向こうの女性社員はトイレでも行くのか席を離れてしまう。言い逃げですか。そうですか。


「バツイチ姫って聞いたことないですか? 私、陰でそう呼ばれてるんですよね」
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