エースとprincess
あきちゃんはああ言っていたけれど、心配しているにしては注意力散漫なんじゃないだろうか。
スケジュールボードに目をやりながら、私は社外にいる瑛主くんに電話をかける。待たされることなく応答があった。机の下に『故障しています』と書かれた付箋が落ちていて、その筆跡が瑛主くんのものだったと言うと、通じたようだった。
「壊れているものってなに? それ、どこに置きました?」
『姫里の想像通りだよ。現物はタブレット端末なんだけど、俺が持ってきちゃったみたいだ。直るの早いなとは思ってたんだ』
思ったなら一言聞いてくれればよかったのに、と言いたいところだけど、たぶんそのころ私は会議室でお茶だしをしていた。逆に言えば、お茶だしをしていたのだから修理に出せるはずがなかった。
私の机には今、どかさなければ仕事にならないほど大きなファイルが何冊も積んであった。誰が持ってきたのかは知らない。けど、このファイルを置こうとして机の上にあった故障中のタブレット端末をそのへんに避けて、そしたら付箋が剥がれ落ちて、端末は瑛主くんに持ち出され……といった様子はなんとなくわかった。「代わりの物を持っていきます」
瑛主くんが取りに戻るよりそのほうが早い。こんなこと、まえにもあったな、このまえは紙の資料だったな、と思いながら乗り物を乗り継ぎ、Mホテルへ。