傷痕~想い出に変わるまで~
急いでシャワーを浴びて、まだ抜けきらないアルコールを体外に排出してしまおうと少し熱い湯船に浸かりながら、むくんだ顔をマッサージした。

なんで私は光に会うためにここまでしているんだろう?

ただ一緒に食事をするだけなのに。

それでもあんまりひどい姿をさらすのはみっともない。

ただでさえ若かったあの頃とは違うんだから、会った途端に今の私にがっかりされるのもいたたまれないし。

お風呂から上がって鏡を覗き込むと、顔色もむくみもさっきより少しはましになっている気がした。

髪を乾かして化粧をして、何を着ていこうかと悩む。

仕事以外に着ていくような服はここ何年も買っていない。

だって実際仕事に出掛ける以外は食料品や日用品の買い出しくらいしか行かないし。

通勤用のスーツで行くのもなんだけど、普段着で行っていいものか。

……まぁいいか。

ホテルのレストランでディナーとか、そんなかしこまった場所に行くわけでもない。

バカみたいに張り切っておしゃれする必要はないんだから、普段買い物に出掛ける時に着ている服で行こう。

出掛けるのに着ていく服に迷うなんて、大学時代に光と付き合っていた時以来だと思う。

その光と会うためにまた着ていく服に悩んでいるなんて、とても妙な気分だ。

自分で意識したことはなかったけれど、離婚してからの私って女を捨てていたんだなとつくづく思う。

恋愛には興味がなかったし、誰かのために綺麗になる必要もなかった。

女を捨てていたというよりは、女である自分を忘れていたという方が正しいのかも知れない。


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