傷痕~想い出に変わるまで~
教育関係や渋い趣味のイベントには一課が、若者をターゲットにしたイベントには二課が強い。

一課は平均年齢も少々高めで、課長の門倉より歳上の社員がほぼ半数を占めている。

それでも門倉が見事に課長を務めているということは、門倉自身にその力量があるのだろう。

逆に二課は課長の私より歳上の社員はいない。

最年長は私で、その下はひとつ歳下の主任の田村くんだ。

適材適所というかなんというか、会社は社員の適性をよく見定めていると思う。

「篠宮、今日はちょっと元気ないな。そろそろ禊か?」

「ああ、うん…そうだね。」

「仕方ないな、付き合ってやるよ。今日は早く終われそうだし、仕事終わったら連絡して。」

「わかった。」



私と門倉は入社して間もない頃、同じ課で仕事をしていた。

仕事に慣れてくると面白くて仕方なくて、ガツガツ貪欲に働いていたと思う。

今思うと、あれは完全に社畜状態だ。

自分達の企画したイベントを成功させることに全神経を集中させていた。

遅くまで残業することも休日出勤さえも楽しくて仕方がなかった。

任された仕事が成功するとこの上なく嬉しくて、その達成感をもっと味わいたくてまた更に仕事にのめり込んだ。

結果的にそれが職場でつらい目にあっていた光との間に溝を作り、離婚の原因になったのだろうけど。

そんなことにも気付かないほど、その頃の私は仕事が楽しくて仕方なかった。



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