傷痕~想い出に変わるまで~
待ち合わせた駅のそばのレストランに入って食事をした。

コーヒーを飲みながら話した後、自宅まで光に送ってもらった。

駅から自宅までの短い道のりを、光と手を繋いで歩いた。

光の手は少しためらいがちに私の手をそっと握っていた。

強引な門倉とは違うな。

門倉は有無を言わさず私を抱き寄せたり手を握ったりしたけれど。

マンションの前まで来ると、光は立ち止まって名残惜しそうに私の目を見つめた。

「ホントに近いんだね。」

「うん。便利でしょ。」

光は私の手をギュッと握りしめた。

「もう少し…一緒にいたいな。」

「……コーヒーくらいしかないけど、少しだけ上がってく?」

思いきって尋ねると光は嬉しそうにうなずいた。

部屋に呼ぶってことは、その後何があってもおかしくないし、もっと言えば何があっても文句は言えないってことだ。

子供じゃないんだし、それくらいのことはわかってる。

決心が揺らがないうちに、私のすべてを光でいっぱいにして欲しい。

そうすれば門倉のことはほんの一時の気の迷いだったと思えるはずだから。



部屋に入ってキッチンでコーヒーを入れた。

コーヒーと一緒に、取引先の担当者からいただいたチョコレートを出した。

光はチョコレートが好きだったからきっと喜ぶと思ったのに、前ほどは食べなくなったと言った。

私の味の好みが変わったのと同じで光の好きなものも変わったんだな。

でもそれはこれから時間をかけて知っていけばいい。

今のお互いのことを少しずつわかり合えたら、きっとうまくいくはずだ。

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