傷痕~想い出に変わるまで~
両手で頬をはさまれじっと顔を覗き込まれた。

「どうする?」

「バカ…病人は大人しく寝てなさい。」

「病人病人言うな。おまえ昨日、やれるもんならやってみなって言ったよな。マジで襲うぞ。」

門倉が右手で私の腰をグイッと引き寄せて、肩口に顔をうずめた。

嘘…まさか本気?!

「わーっ!嘘です!ごめんなさい!!やれてもやらないで!!」

必死で熱い体を押し返すと、門倉は呆気なく私の体から手を離した。

「冗談だ、バカ。こんな時にやるわけねぇだろ。」

こんな時にって…。

こんな時じゃなかったらやるのか?!

……それはともかく、光になんと言って謝ろうか。

「とにかく…それだけの元気があればもう大丈夫そうだし、私は帰るね。」

起き上がろうとするとまた抱き寄せられ、門倉の唇が一瞬私の頬に触れた。

カーッと顔が熱くなるのがわかって、その顔を見られないようにうつむいた。

「…ありがとな、篠宮。」

「お…お礼なんていいから…早く治しなさい。」

心臓がドキドキと大きな音をたてているのを気付かれないように、慌てて門倉の体を押し返した。

急いでベッドから降りてバッグと上着を手に取る。

「冷蔵庫に飲み物と食べ物があるから、ちゃんと食べてから薬飲んでよ!あと、冷凍庫にアイス枕が冷やしてあるから使って!」

「オカンかっての…。」

門倉はベッドの上で苦笑いを浮かべている。


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