傷痕~想い出に変わるまで~
玄関で靴を履いて顔を上げると、門倉は私の方を見て優しい笑みを浮かべていた。

なんだか無性に照れくさい。

「ちゃんと休んで今日中に治すように!じゃあね!」

「おー…また明日な。」

あんな高熱がたった1日で下がるかはわからないけど、門倉はそう言って軽く右手をあげた。

門倉の“また明日な”って台詞、久しぶりに聞いたな。

また当たり前のようにそう言ってくれたことが、とても嬉しい。


マンションを出て、駅までの道のりがわからないことに気付いた。

夕べはタクシーでここに来たから、駅まで歩いてどれくらいなのかもどちらに行けばいいのかもわからない。

地図を見て調べようとポケットからスマホを取り出してみたものの、充電が切れて電源が入らない。

そう言えば前の晩に充電をし忘れていたんだった。

いつの間に切れてしまったんだろう。

もしかして…光が私からの連絡がないことを心配して電話をしても電源が切れて繋がらない状態になっていたかも知れない。

光からの電話が煩わしくてわざと電源を切ったんだとか変な誤解されてたりして…。

心配してるかな。

それとも怒ってるかな。

とにかく光に会って正直に話して謝ろう。

高熱で動けない門倉の看病をしていたのは本当のことだけど、先に連絡をしなかったのもうっかり眠ってしまったのも私が悪い。

下手に隠すとやましいことでもしていたみたいだ。

……光に言いづらいことがまったくなかったわけでもないけど。




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