傷痕~想い出に変わるまで~
「…門倉は?」

「俺も3ヶ月前に離婚してちょうど3年経った。結婚期間は3年だったから、禊はこの辺で終わりにしようと思ってる。」

いつも私の禊に付き合ってくれていただけで、そんなこと考えてたんだ。

門倉は前を向いて進もうとしている。

なんだか取り残された気分。

「貴重な仲間だと思ってたんだけどな。」

「仲間だろ?同期で役職も同じ課長だし。ついでにバツイチだし?」

「禊仲間じゃなくなる。」

「篠宮の禊が済むまでは付き合ってやる。その後は普通に飯食って酒飲んで話せばいいじゃん。」

門倉はいとも簡単にそう言うけど、私にもそれができるだろうか?

今だってちょっとしたことで光のことを思い出して、後悔したり泣いたりしてしまうのに。

「結婚期間と同じ5年が過ぎたから終わりって…そんなに簡単じゃないと思う。」

「俺な…離婚してちょうど3年経った日に指輪処分したんだ。ゴミに出すのもなんだから、他の不用品と一緒にリサイクルショップに持ってった。」

「そうなんだ…。」

門倉はタバコに火をつけた。

オイルライターの蓋を閉める金属音がカチャンと響く。

「そのライターは処分しないの?」

私がオイルライターを指差すと、門倉はライターを手のひらに乗せてタバコの煙を吐き出した。

「あー…これも処分するつもりだったんだけどな。戒めとして手元に残しておくことにした。」

「戒め…?」

「もしまた将来を考えるような人が現れても同じ失敗を繰り返さないようにって。」

また結婚を考える人が現れる時のことを考えているなんて。

門倉は私が思っていたよりずっと吹っ切れているようだ。







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