傷痕~想い出に変わるまで~
薬を飲んだ後、光はベッドに横になってぼんやりと天井を見上げていた。

やっぱりまだ具合が悪いのかな。

「光、お風呂入れる?」

「体はちょっとだるいけど…瑞希が一緒なら入れる。」

「えっ…一緒に?!」

新婚の頃は何度か一緒に入ったこともあるけれど、もう何年もお風呂には一緒に入っていない。

光は私の裸なんか見飽きてるだろうけど、なんだかものすごく恥ずかしい。

「背中流してくれる?それから二人でゆっくり湯舟に浸かりたいな。」

「えーっ…。言っとくけどお風呂でやらしいことしないでよ、のぼせちゃうから。」

新婚の頃の教訓だ。

“お風呂でやらしいことをするとのぼせて危ないからやめておこう”

思えばあの頃は楽しかった。

二人で笑って食事をして、一緒にお風呂に入ってイチャイチャして、少しのぼせて二人してベッドに倒れ込んで、また笑ってキスをした。

若かったな、二人とも。

一緒にいられることが何よりも嬉しくて、そばにいるとお互いの肌に触れ合いたくて。

何度も愛してるの言葉をくりかえしながら優しい気持ちで肌を重ねた。

またあの時みたいに戻れたら幸せだと思えるのかな?



一緒にお風呂に入って、光の背中を流した。

なんだか痩せたみたい。

体調を崩しているからなのかも。

「瑞希に背中流してもらったのなんて何年ぶりだろ?」

「そうだね。新婚の頃以来かな。」

「新婚の頃はよく一緒に入ったな。」

「あの頃は若かったからアレだけど…今はもういい歳になったから恥ずかしいね。」

「瑞希はあの頃も今も可愛いよ。」

可愛いって…。

そんなこと言われるとかなり照れる。



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