傷痕~想い出に変わるまで~
「彼の家はかなり封建的な考え方をするみたいで、嫁は働いて当たり前だけど何よりも優先すべきは家なんだそうです。夫や子供のために嫁は自分を犠牲にするものだって。」

結婚してから相手の家の考え方に辟易するなんて、世間ではよくある話だ。

男女平等と言いながら、ちっとも平等じゃない。

結婚すると女は、家のために働き夫に尽くして当たり前の“嫁”という生き物になるとでも思われているのだろう。

「こんなことを聞いていいのかわからないんですけど…篠宮課長は家同士の考えでもめたりはしなかったんですか?」

「私?そうだねぇ…。」

私の家も光の家も両親ともにあまり濃い親戚付き合いはなく、元々二人とも大学を卒業したら実家を出て一人暮らしをする予定だったから、結婚すると言っても反対はされなかった。

一人暮らしよりその方が安心だとか、その方が経済的だとさえ言っていた。

仕事に関しても新入社員の給料では共働きじゃないと生活していけないから、家庭に入れとかパートに出ろなんてことは一度も言われなかった。

「大学卒業してすぐ結婚したからね。決まった就職先に勤めるのが当たり前だと私たちも両親も思ってたよ。両家とも濃い親戚付き合いはなかったし、仕事とか親戚付き合いに関してはもめなかった。」

「うらやましい…。家によって考え方がまったく違うんですね。」

あちらの親ともめたことは一度もなかったけど、当人同士の問題でたった5年で離婚した。

それだけだ。



< 24 / 244 >

この作品をシェア

pagetop