傷痕~想い出に変わるまで~
「もう会うつもりはなかったからね…。こうして光が目の前にいるのが今もまだ不思議。」

「瑞希の会社で偶然会った時は人違いかと思ったよ。ずいぶん変わったから。」

そうでしょうとも。

光の好みとは真逆の女になろうとしたんだから。

「5年近くも経てば人間変わって当然だと思うよ。私は変わったって言っても見た目は髪形変えて少し老けたくらいで、中身はたいして変わってない。」

「昔は腰ぐらいまで髪伸ばしてかわいかったけど…瑞希はショートも似合うんだな。大人っぽいし…綺麗になった。」

これは罪悪感から出たお世辞かな?

今更別れた元妻を誉めても何も出ないのに。

「離婚してから…瑞希はどうしてた?」

光はためらいがちに尋ねた。

これだけ見た目が変わったのだから、さぞかしいろんなことがあっただろうと思っているのかも。

「どうも何も…私には仕事しかないから。ずっと仕事して2年前に課長になった。」

「うん…そうか。」

面白みの欠片もない私らしい返事に呆れたかな。

だけど本当のことだから仕方がない。

「…光は?」

「俺は…。」

口ごもる光の目の前で、わざと光の嫌いなタバコに火をつけた。

ゆっくり煙を吐き出すと、光は少しだけ悲しそうな顔をしていた。

瑞希は俺のせいで変わっちゃったんだな、とか思ってたりして。

「再婚はしなかったの?…あの人と。」

歯に衣着せてもしょうがないから、単刀直入に尋ねた。

光は少し驚いたのか、ばつの悪そうな顔をしている。


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