傷痕~想い出に変わるまで~
今更だけど惨めだな。

できればこんなこと聞きたくなかった。

もうここにいたくない。

「まさか、今更こんなこと話すために私に会おうと思ったの?だったらもう話は済んだでしょ。」

短くなったタバコを灰皿の上でもみ消して、タバコケースと伝票を手に取り立ち上がろうとした。

「違う、まだ話したいことがあるんだ。」

「光は話せばスッキリするのかも知れないけど、今更そんなこと聞かされた私はどうすればいいの?もう何も聞きたくない。」

立ち上がって席を離れた私の腕を光が強い力で掴んだ。

「待って瑞希!お願いだから!」

またジロジロ見られてる…。

まるで見世物だ。

人前で痴話喧嘩してるカップルみたいで恥ずかしい。

「痛いよ…離して。」

「あ…ごめん。」

光は慌てて手を離し、私の手から伝票を取ろうとした。

「俺が払うから。」

「いい。ほとんど私の分だから私が払う。恥ずかしいからとにかく早くここ出よう。」




会計をカードで素早く済ませて店の外に出た。

店を出たのはいいけれど…これからどうしようか。

まだ話したいことがあると言われても、外で人目を気にせず落ち着いて話せる場所なんて知らないし、室内で二人きりになるのは避けたい。

腕時計を見ると時刻は既に9時半を回っている。

ここからまっすぐ自宅に帰っても10時を過ぎてしまう。

それより何より何時だろうが構わないけど、とにかく帰りたい。

早く光のいない場所で一人になりたい。


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