傷痕~想い出に変わるまで~
「えっ?!そんな相手がいるのか?」

門倉は少し焦った様子で尋ねた。

先を越されるのがそんなに悔しいのか?

「いや、今はまだいないけど門倉より先に見つかればいいなって。」

「…ホントにムカつくな、おまえ。」

「ムカつくのはお互い様でしょ。」

なんだかんだ言っても門倉はいいやつだし、気取ったり飾ったりせず気兼ねなく冗談を言い合える。

もちろん信頼もしているから悩みを打ち明けられるし、真剣な話もできる。

こんなに素の自分をさらけ出せる相手はなかなかいないと思う。

でももしいつかお互いに新しい恋人ができたとしたら…?

やっぱり恋人が優先になるだろうし、今みたいに一緒にはいられないんだろうな。

それはそれで少し寂しい気もするし、新しい恋に踏み出すにはきっと勇気がいると思うけれど。

もし次に出会う誰かと恋をするならば、門倉も私も、最初の結婚の時よりも今よりも、ずっと幸せになれたらいいな。


駅の前までたどり着いた時、私と門倉はいつものようにスーツのポケットから電車の定期を取り出して向かい合った。

「ねぇ門倉。」

「なんだ。」

「いつになるかはわからないけどさ…もし次があるなら、次こそは好きな人と幸せになれるといいね、お互いに。」

「ああ…。幸せになりたいし、めちゃくちゃ幸せにしてやりてぇな。」

自動改札を通り“また明日”と右手をあげて別々のホームへ向かった。

そして私たちはいつも通り、それぞれの帰路に就いた。





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