鬼上司は秘密の恋人!?
 
「すごいですね。これが雑誌になるんだ」

感心したようにゲラをまじまじと見つめ、顔を上げて笑う。

「わざわざ確認に来てしまってすいません。僕みたいなひよっこ議員は雑誌の取材なんてなかなか受けないので、気になってしまって」
「そんな警戒しなくても、悪口なんて書きませんよ」

薄く笑ってそう言った石月さんに、宮越議員はまったく動揺を見せず白い歯を見せて笑う。

「石月さんが週刊誌にいた頃から与党の先輩たちが色々鋭く突っ込まれているのを拝見していたので、今回のインタビュー中もヒヤヒヤしていたんですよ」
「どれだけ突っ込んでも、少しもボロを出してくれないので、さすがだと思いましたよ」
「それは褒め言葉だと受け止めて、ありがとうございますと言っていいのかな?」

宮越議員はおどけたように笑ってフロアを見回す。

そんなやり取りを不思議に思い、隣にいる徳永さんの顔を見ると、「『ステートメント』が創刊する前は、石月チーフは週刊誌の政治担当だったんだよ」と小声で教えてくれた。

「そうなんですか?」

だから国会議員の宮越さんとも面識があるんだ。

「週刊誌の政治担当なんて、政治家の金や女性問題のスキャンダル狙って嗅ぎ回るハイエナみたいなもんなのに、石月さんは『相手の本質も知ろうともしないで、粗探しばっかりすんのは性に合わねぇ』って、テレビ局や新聞記者にまじって夜中まで国会に詰めてたらしいよ」

そんなセリフを言う石月さんの姿が簡単に想像できて、思わず苦笑いしてしまう。
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