鬼上司は秘密の恋人!?
 

編集部で広告ページのカンプを整理していると、「手伝おうか」と徳永さんに声をかけられた。

「ありがとうございます。でも大丈夫です」

振り返り首を横に振る。

「自分が雑誌を読んでるときはあんまり意識してなかったけど、雑誌ってこんなにたくさんの広告が載ってるんですね」

読者として雑誌を読んでいるときは、ぱらぱらとめくって、どこが本文でどこが広告かなんて意識せず、気になったページを見ている感覚だったけど、こうやって広告だけを集めると、その量の多さに改めて驚く。

「まぁね。広告収入がなかったら、雑誌なんて作れないからね」
「そうなんですか?」
「景気のいい頃は、タウン情報誌なんかは広告収入だけで利益が出てたらしいよ」

徳永さんの言葉に手を止め、顔を上げた。

「ってことは、一冊も売れなくても赤字にならなかったってことですか?」
「まぁ、売れなかったら広告主はお金を出してくれないから、売れる雑誌を作らなきゃいけないってことに変わりはないけど」
「あ、そっか」
「そう。だから編集部や執筆者はもちろん、広告主も、本を売ってくれる書店も、読んでくれる読者も、どこかひとつ抜けたら雑誌なんて出来ないんだ。みんなのおかげで成り立ってる」
「へぇ……」

そう言われ、ステートメントの今月号を持ち上げる。
なんだかこの編集部で働きだして色々知ると、一冊の雑誌がずっしりと重く感じた。

 
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