鬼上司は秘密の恋人!?
「街頭演説中に、偶然野党の支援者らしき人たちに因縁をつけられて、偶然その場にいた若い女性が押しのけられ倒れ込んだ。宮越さんは持っていたマイクを放り出し、彼女の元へ駆け寄った。その姿を偶然その場にいた一般の人が写真に収め、偶然SNSで拡散された」
偶然、という言葉に力を込めて、石月さんが言う。
「まるで王子様のような写真の姿に宮越さんの名前は一気に広がり、選挙予想を覆し六枠の中に滑り込んだ。どこまでがあなたの思惑かは知りませんが、とても効率的な選挙活動だ。金をばらまいて有権者を買収するよりも、ずっと賢い」
「……あなたもおっしゃっているように、偶然ですよ」
それまで黙っていた長尾さんが、口を開いた。
「そうですね。偶然が全て良い方に転がり、見事宮越さんは当選された。しかしひとつだけ予想外だったのは、宮越さんと由奈さんが恋に落ちてしまったことだ」
そう言われ、長尾さんがまた黙り込む。
「辻立ちの王子様とそのとき助けられた女性が恋に落ちた、なんて、とても運命的な話だ。しかしあなたはそれを良しとしなかった。由奈さんが、あなたが雇ったサクラだったからですね? あの日あの場所で、野党の支援者を装った協力者と揉め事を起こして宮越さんの前で派手に倒れてくださいと、お願いをされていたんですよね?」
その言葉に驚いて石月さんの顔を見た。石月さんはちらりとこちらを見て、すぐに視線を前に戻す。
「由奈さんはご両親をなくされてから、夜スナックで働かれていた。少しガラの悪い団体が立ち寄るような。正直お金にも困っていたんでしょう。簡単なバイトでお金がもらえると聞いて、きっと深く考えず首を縦に振った」
私がまだ高校生だった頃、昼も夜も一生懸命働いてくれた由奈のことを思い出して、ぐっと唇を噛みしめる。