鬼上司は秘密の恋人!?
 
「写真を撮られてそれで終わりだったはずが、ふたりはひと目で恋に落ちてしまった。由奈さんはそれから気づいたんでしょう。自分が頼まれてしたことの意味を。もし自分がお金をもらってあの時あの場所にいたことが世間に公になれば、宮越さんに迷惑をかけると。宮越さんだけが、なにも知らされていなかったんですね?」

長尾さんは身動きひとつせず、じっと黙り込んでいた。
でも神経を尖らせて、石月さんの口にする一言一句を聞きのがすまいとしているのが分かる。

「このまま由奈さんと宮越さんが付き合いを続ければ、いつか世間にも宮越さんにもバレてしまうと思った。だから、二人の交際を知ったあなたは、罪悪感を抱いている由奈さんに身を引けと迫った。愛情と罪悪感の板挟みになって、由奈さんも辛かったでしょうね。子供ができたことも、本人に直接報告することすらできず、秘書のあなたに、子供を堕ろせと門前払いされて」

その時の由奈の気持ちを思うと、瞼の奥が熱くなってぐすっと鼻をすする。

由奈にそんなことがあったなんて、少しも知らなかった。
相談してくれたらよかったのに。頼ってくれたら良かったのに。
そう恨みたくなるけど、たとえ全てを明かされていたとしても、その時高校生だった私に、なにかできるわけがない。

「元々宮越さんは、政治家になるのを拒んでいたそうですね」

石月さんはそう言って、少し顔を歪めた。

「あなたは宮越さんの父、参議院議員の宮越忠彦さんの秘書だった。忠彦さんが病に倒れ亡くなってから、その地盤を引き継ぐようにと会社員だった一彦さんを、無理やり神輿の上に担ぎ上げた。あなたが出馬しなければ、愛する夫を亡くしたばかりで憔悴している宮越さんの母を出馬させると、半ば脅しのように」

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