鬼上司は秘密の恋人!?
「優しいって、誰と比べてんだよ」
じっとりと睨められて、慌てて大きく首を横に振った。
「誰とも比べてないですよ。はじめて好きになったのが石月さんですもん」
高校の時両親を亡くし、それからは必死で祐一を育て、恋をする余裕なんてなかった。
「全部初めてだって、知ってるくせに」と石月さんを睨む。
「ふーん」
石月さんのからかうような表情に、私は頬をふくらませる。
「石月さんこそ、相当遊んでたくせに」
「は?」
私の言葉に石月さんは眉をひそめた。
「徳永さんが言ってました。石月さんは真剣に女の人と付き合わないけど、遊びで受付の女の子とかヘアメイクの子に手を出してたって」
「……あの野郎」
舌打ちした石月さんに、本当のことなのかと目を見開く。
すると「そんな嘘、信じんなバカ」と睨まれた。
「職場の人間相手に遊びで手を出すわけねぇだろ」
「職場以外の人には出してたってことですか?」
「さぁな」
「……ひどい」
私が顔をしかめると、子供をあやすようにぐりぐりと頭を撫でられた。
そのままこつんと額をくっつけ、ねだるような甘い視線をこちらに向ける。
「本気で惚れたのはお前がはじめてだし、これからもお前だけ。それじゃダメ?」
「そんな顔、ずるい」
そんなふうに甘く懇願されて、許さないわけがない。
私が頬をふくらませると、石月さんは鼻にシワを寄せて笑った。