鬼上司は秘密の恋人!?
 

すると、つけっぱなしのテレビから、女性キャスターが待機児童問題を伝える声が聞こえてきた。

『私もいわゆるシングルマザーで、仕事をしながら一人で子供を育ててきましたが……』

その言葉に顔を上げ画面を見る。
凛とした声で背筋を伸ばし、堂々と自分の意見を言う女性キャスター。
ニュースの最前線で男の人の中に混じり仕事をしているこの人も、私と同じように一人で子供を育てていたんだ。

同じような苦労をして、そして乗り越えて輝いている人がいる。
そのことに少し勇気をもらえた気がした。
きっと大変な思いをしているのは、私だけじゃない。

「ゆきー? どうしたの?」

由奈への一日の報告を終えた祐一が、いつの間にか私の足元に来て、不思議そうにこちらを見上げていた。
私は慌てて笑顔を作り、首を横に振る。

「なんでもないよ。もうすぐご飯できるからね」
「きょうのごはんはなにー?」
「今日は鶏の照り焼きと、お豆腐のお味噌汁と、人参と水菜とツナのサラダだよ」
「にんじんかぁ……」

生の人参が苦手な祐一は、この世の終わりのような深刻な顔でそうつぶやく。
その表情が可愛くて、思わず吹き出した。



< 26 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop