鬼上司は秘密の恋人!?
「なんでお前があのチビをひとりで面倒見てんだよ」
鋭い視線で詰め寄られ、うつむきながら事情を話す。
両親に先立たれたこと。
一緒に暮らしていた姉が、子供を産んだこと。
そして四歳の祐一を残し事故で亡くなってしまったこと。
ぽつりぽつりと話す言葉を、石月さんは険しい表情で聞いていた。
「履歴書には、扶養家族がいるなんて書いてなかったぞ。なんで甥っ子を育ててることを会社に内緒にしていた」
キツイ口調で言われ、すいませんと頭を下げる。
「面接の時に野辺編集長に全て事情を説明して、実の子ではない甥っ子を育てていることを、前の職場で面倒がられたり、中傷されたことがあったと話したら、同情してくださって……」
そこまで言うと、全て理解したというように、石月さんは大きなため息をついた。
「あー……、あのおっさんは、すぐ無責任に捨て猫を拾ってきやがる」
私は捨て猫じゃないです、と頬を膨らませると、石月さんの視線がこちらに流れてきた。
「チビの父親って、誰かわかんねぇの?」
突然そう言われ、私は戸惑いながら頷く。
「はい。姉の由奈は、『父親には頼らず私が育てる』と言って、なにも教えてくれないままでした。認知もしてもらっていないので、祐一の戸籍の父の欄は空白のままです。父親が祐一の存在を知っているのかどうかもわかりません」
「そっか……。じゃあ、そっちに頼るのは無理なんだな。で、お前の身内もゼロか……」
そう言われ、私は俯く。