暴走族に恋をする。
「大丈夫?桜子ちゃん。」
「………大津くん…」
私のすぐ前には、すでに私服姿となった大津くんが立っていて、山村祥子さんの腕を力強く掴んでいた。
「…快斗が守るってことは、本当にこいつがブラスパの…」
「関係ない。
この子がブラスパに出入りしたのは事実だけど、この子は蓮の女じゃない。
勝手な妄想で関係ない子に当たってんじゃねーよ。」
そういって大津くんはこの人を軽く突き飛ばし、
「行こ。」
私の腕を掴んで歩き出した。
「念のために聞くけど、桜子ちゃんって蓮と付き合ったわけじゃないよね?」
「え…う、うん。当たり前です。」
私がそういうと、大津くんは肩を下ろし、またあの優しい笑顔で私を見た。
「よかったー…
なんか無駄に蓮と仲良くなってるから、変な心配しちゃったじゃん!」
「変な心配?」
「だから、桜子ちゃんと蓮が付き合ったんじゃないかって。」
「ありえませんね。」
「ならよかった!
俺昨日からめっちゃ考えちゃったじゃん!!」
そう言う大津くんはいつも通りの大津くんで、私も本当に安心した。
「実はね、早坂が教えてくれたんだよ。
桜子ちゃん、もしかしたら狙われてるかもよって。」
「え、早坂さんが?なんで?」
「早坂は友達が多いからな~。
あ、ちなみにさっきの女は蓮のことが大好きな山村祥子。
麗蝶(れいちょう)っていうレディースのトップで、ブラスパと手を組みたいって言ってる内の一人ね。
俺が桜子ちゃんをブラスパ連れてったりしたから勘違いしたんだよ。
早坂さ、桜子ちゃんの写真を見せられて前に聞かれたんだって。
この子知ってる?って。
それで素直に答えちゃったから責任感じてるっぽい。」
「………早坂さんが…」
ちょっと意外。
あんなギャルっぽい子が、私の心配だなんて……
「ま、それ聞いて急いで駆け付けたら案の定絡まれてるし。
俺来てよかったー。」
「ありがとう、来てくれて。」
「ん、どういたしまして。」
私に見せる笑顔はやっぱり学校で見せるものとは違って、そんな顔を見られることが本当に嬉しく思った。