君の涙の理由を俺は知らない。
好きだよ




「くがくん。」


なゆの口からでたのは知らない男の名前だった。


それが誰なのか、俺にはすぐに理解できた。


あの男……。





今、隣には俺がいるのに。



……俺を見て。





「なゆ。」


名前を呼べば夢かうつつかの様子で俺を見る。



「んー。」

またすぐ目を閉じようとするから、閉じた瞼に触れるだけのキスをした。



「名前呼んで。」

って言えば「どうしたの?」って言いながら

「しおん。」

って俺の名前を呼ぶ。



起こしている体を倒し、顔の横に手をつくと不思議そうに下から俺を見上げるなゆ。


そしてキスをした。



「もっかい。」

「…しおん。」

また。


「…もっかい。」

「どうしたのしおん?」

なゆが名前を呼ぶ度にキスを繰り返す。



「なゆ。」

好きって言えばなゆはなんて言う?


喜んでくれる?

照れながら私もって言ってくれる?


困った顔して、黙る?



……迷惑?




「…そっか、しおんも寂しいんだね。」

何を思ったのか、なゆは変なことを言い出した。


手を伸ばして俺の頭を撫でる。



ほら、そうやってなんの気もないくせに、そんな事するから


「んっ…。」


もう我慢しねぇし。





もういっそ抱いてしまえば、なゆは俺の事だけを見てくれるかなって、バカな俺は変な答えにたどり着いた。



Tシャツの中に手を入れ、なゆの肌に触れる。


擽ったそうに身を捩る姿に余計そそられる。



「なぁ、目閉じんとって。」

目を閉じているのを見ると、またあいつの事考えてんのかなって思ってしまう。



「俺を見とって。」


ヤキモチ。



甘い声を漏らしながら俺を見つめる瞳。


この顔、あいつにもしとったんかな……。



そんなことを考えていたら突然、首の後ろで手を絡ませる。


そのままなゆの方に引き寄せられキスをされた。



なゆの方からキスしたのは初めてで、戸惑う。




「泣きそうな顔してた。」

「は…?」

俺が……?



「泣きたいなら泣いてもいんだよ。私も泣いちゃったし。」

そのままなゆに抱き締められた。



なんか、俺ばっかりドキドキしてる。


まぁ、なゆは俺の事思ってないから当たり前なんだけど。



悔しいから。



目の前のなゆの首を甘噛みした。


それにビクッと体を反応させ、絡ませていた指で今度は俺の肩を押す。




離れてやるもんか。



噛んだ所に舌を這わせ、邪魔な手をベッドに押し付ける。


指を絡ませれば強張る体。



「いたっ。」

吸い付いた所に赤い花が咲いた。


同じ様に赤くなった頬。


花を抑え、潤んだ瞳を無意識な上目遣いで俺に向ける。



「そろそろ限界。」

次は唇にキスをした。



眠るまで、その目にずっと俺を映してて。








好きだよ。








抱いている間、何度もあの歌が頭を流れた。


好きでもない他の人に抱かれ、それでもなゆは幸せなのだろうか。




「しおん。」

甘えた顔で俺を求める。



いや、もしあの時、俺じゃない人が同じようにしても、なゆはこうした?


考えても悲しくなるだけでやめた。



紛らわすようなキスをする。




あの歌は、俺たちだな…。



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