恋は世界の片隅に【短編集】
「友梨!」
春くんが、あたしの肩を両手で掴む。
そのわずかな痛みに、思わず体が震えた。
「ご、ごめん。つい」
「……あたしこそ、ごめん」
「何があったか話して?友梨」
いつもの優しい声で、春くんが問いかけてくる。
あたしは、溢れそうになる涙をこらえて、胸の中にある不安を吐き出した。
「あたし、ずっと不安だったの。春くんが、秘密の関係にしようって言った理由」
「どんな理由だと思ったの?」
「春くん、あたしの存在に引け目を感じてるんじゃないかって。あたしが地味で可愛くないから、堂々と隣を歩けないんじゃないかって――…」
「……」
「……春くん?」
「お前、俺のこと、ずっとそうゆう風に思ってた?」
気がつけば、春くんの顔から笑顔は消えていた。
今までに見たことのない、冷たい目で、あたしを見ていた。