未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
生演奏の結婚行進曲が鳴り響く。


ついにこの時が来た。

葉山と付き合い始めてから六年。
私達は今日、結婚する。


「では、お時間です」


インカムを付けたスタッフが言うと、ふぅと息を吐いた。

緊張し過ぎて貧血を起こしそうだ。


でも、私にはこれがあるから大丈夫。
付き合い始めた日に貰った、葉山の気持ちが詰まったたった二言の手紙。

貰った日から今日まで肌身離さず持ってた。
もちろん今日も介添人の方にお願いして、ドレスの中に忍ばせてある。

この手紙は私の宝物。
これがあれば何だって頑張れる。
いつでも葉山が側にいて守ってくれてるような気がするんだ。



一斉に大きい白いドアが開くと、飛び込んで来た光に思わず目を細めた。

大理石のバージンロードに白い太陽の日差しが当たり宝石のように眩しい。


オルガンの綺麗な音と沢山の拍手の中、腕を組んだお父さんと一歩前に進み、ゆっくりとお辞儀をする。

心臓は人生最高と言えるほど、激しく鼓動を繰り返している。


顔を上げると、私が大好きな人達の心からの笑顔があった。

家族や親戚、大好きな友達、お世話になってる職場の上司や後輩。

そして、バージンロードの先に立つ最愛の人、葉山大輝。


色んな記憶が走馬灯のように駆け巡る。

まだ始まったばかりなのに、目頭が一気に熱くなった。


「行くぞ」


お父さんに引かれるようにバージンロードをゆっくりと進む。


新郎側の席に座る平野課長と倉本さん。
二人は去年結婚した。
倉本さんは寿退社し、今はお腹の中に新しい命が宿っている。

秘書課の斎藤さんは相変わらず格好良い。
つい最近知ったのは、実はシングルマザーで小学生の息子がいるということ。


視線を前に戻すと、すでに涙を流した花梨と細井の姿が見えた。

滅多に泣かない花梨の涙を見たのはこれで三回目。

その涙を拭くのが、細井だ。
まさか二人がくっつくなんて思いもしなかったけど、案外お似合いな二人。

それにしても。
あ〜あ、綺麗な顔が台無し。
くしゃっと顔を歪めて泣く花梨。

私の全ての思い出に花梨がいる。
悲しかったこと、寂しかったこと、楽しかったこと、幸せだったこと。

花梨がいたから私の青春時代は色付いた。


「ありがとう、花梨。大好き!」


震える唇で涙を堪えながら言った言葉はちゃんと届いたようで、花梨は何度も頷いた。



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