未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「私、葉山のところに行って来る!」

「ちょっと落ち着きなって!」

「だって……こんなことってある?私が葉山の下駄箱に手紙入れたの、花梨も見てたでしょ?」


葉山から驚愕の手紙が届いたのは、私がデートの誘いに対して返事を送った三日後の朝だった。

いつもより少し小さく見える葉山の字。

不安になってる葉山の気持ちが文面に現れていて、胸がぎゅっと苦しくなった。


「見た……確かにこの目で見たよ。でも、届いてないってことは……」


私に遠慮してなのか、なかなか核心を言えず口籠る花梨。

花梨の言いたいことは聞かなくてもわかる。

入れたのに葉山の手には届いてない。
それはつまり……


「第三者が手紙を抜き取ってる」


言葉を失った私と花梨の代わりに、保健の蒲田先生が神妙な声で言った。


相変わらず利用者が来ない昼休みの保健室。

ピタッと空気が凍り、しんっと静まり返った。

窓の外はいつもの昼休みの景色なのに、ここだけが北極にワープしてしまったかのように寒い。



「抜き取ってる……?」

「ま、まさか…」


いつも優しさ溢れる先生の顔が悲しそうに歪んだ。

私も花梨も同じ事を思ってた。
だからそれ以上何も言えなくて、でもそんなの信じたくなくて、下唇をきゅっと噛んだ。


「信じたくない気持ちはよくわかる。私も同じよ。でも、立て続けに手紙が無くなるのはやっぱりおかしい。普通ではあり得ないことよ」

「で、でも…誰がそんなこと」


声が震えた。
心臓がドクンドクンと嫌な音を立てる。


「それはわからない。でも、葉山君のことを本気で好きだっていう女の子は少なくない」


目の淵に涙がじんわりと溜まっていく。



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