コミュ障なんです!

「はいはい。ごめん」

「もう、なんなんですか」

「で、何があったの?」


そう言われて、ここまで誘導されたんだってことに気付いた。
あの場で問いかけられていたとしたら、私はきっと何も言えなかっただろう。
まさかそこまで、お見通しで……?


「トレンドハウスの打ち合わせはうまくいきました。ただ、ちょっと、社内のメンバーとうまく話せなかっただけです」

「ふうん」

「わ、私、人と話すの苦手なんですよ。テンパるし、手に汗かくし、頭が回らなくなるし。それで、こうやって資料にすぐまとめてしまうんですけど」

「うん。それはいいんじゃない?」

「でも、それってバカにしてるって思われることもあるみたいで」


あ、やばい。
言ってたら泣きたくなってきた。


神谷さんと川西さんの刺すような視線まで思い出して、胸が苦しくなる。

嫌わないで。嫌われるの怖い。
だったら、最初っから関わりあいになりたくない。


「ほら私って空気読めないから……」


そういったら、頭をぐいっと引き寄せられた。
はずみで、こらえていたはずの涙があふれて、眼鏡のレンズの内側にぽつりと落ちる。


「君は空気読まないんじゃなくて、読みすぎなんじゃない?」

「そんなことは」

「だから他人の反応に苦しくなるんでしょ」


つむじのあたりにかかる息、諭すような声。
力がぬけてしまいそうになる。
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