コミュ障なんです!

永屋さんはすっかりご機嫌な様子で、軽く鼻歌を口ずさみながら、私の隣を歩いている。


「ところで今夜だけど空いてる?」

「え?」

「昨日の朝言ったじゃん。飯でも一緒に食べようよ」

「あ、……えと」


ど、どうしよう。
嬉しいけど……いや、嬉しいか?
変なこと話して嫌われる可能性をあげるだけじゃない?

だめだ。好きだって自覚したら余計気が引けちゃう。


「あの……」


断ろうかと逡巡しているとき、廊下からよく通る声がした。


「あ、いた、永屋くん」


数メートル向こうから駆け寄ってくるのは、三浦さんだ。
私もいるのに気づくと、一瞬躊躇したように足をとめたけれど、その時にはもう永屋さんが反応していた。


「どうした? 三浦」

「あ、えっとさ。聞いた? 梶さんが戻ってきたって話」

「え? 梶さんって、トレンドハウスの?」


その問いは私に向けられていたので、頷いて答えた。


「えっと、最近本社勤務になったんだそうです。永屋さんにも会いたがってましたよ」

「あ、ホント。なんか懐かしいな。三年ぶりくらいか?」

「そのことで相談があるのよ。今日空いてない? 永屋くん」


ちらりと気まずそうな視線を私に向けてから、三浦さんが手を合わせて永屋さんを拝む。

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