コミュ障なんです!
「結局、一年しか続かなくてね。別れのメールが来たときは帰国もできなかった」
「そうなんですか」
「ただ一日帰るだけじゃ何にもならないと思って。必死にであっちで成果あげて凱旋しようと思ったんだけど、逆になかなか離してもらえなくて」
ぐびっと杯をあおる梶さん。
ちょっと涙目になっているのに気付いたけれど、あえて何も言わずに続きを待つ。
「……気が付けばそこから二年もかかってしまった。浦島太郎みたいなもんだよ。必死すぎて、ほかの人なんて考えられなかった」
ずいぶん切ないことをいう。
梶さんにとっては、必死な時間だったのだろう。三浦さんを思う、深い愛情もあったはずだ。
だけどそれは三浦さんにとっては、梶さんを忘れるための、長くてつらい二年だった。
救いを求めたことを責めるなんて誰にもできないでしょう。
「今回帰れることになって、すごく期待してたんだけどなぁ」
泣き出しそうな声を出す。
痛々しくて、かける言葉が見つからないのか、永屋さんは黙って、空いたグラスにビールを注いでいた。
私は、考えるより先に声が出ていた。
「……好きなら、諦めなければいいんじゃないですか?」
「え?」
梶さんが不思議なものを見るように私を見る。
そうだよね。さっき三浦さんの恋を励ましたのは私だ。それで梶さんのことも応援するなんて変だとは自分でも思う。
だけど、梶さんの気持ちも本物だってわかると思ったら、閉じなきゃと思う口をこじ開けるように言葉が出てくる。