コミュ障なんです!
「やりすぎだったかな。ほら、乗って乗って。花は後ろに置こうか」
彼が花を持ち、後部座席へ置く。私が助手席に座ると彼が扉を閉め、運転席へと回ってくる。
お嬢様にでもなったみたいで、足元がふわふわする感覚。これって現実なのかな。
洋斗さんと付き合い始めたことも含めて、夢でも見ているんじゃなかろうか。
車が動き出し、カーステレオからはラジオが流れる。
「曲まで選別してる暇なかった」
と笑う彼に、そんなところまで気を使うのかよと若干驚く。
それにしても車か……。
閉鎖空間にふたりきりってことだよね。普通に街歩くより、会話が枯れやすそうなんだけど大丈夫かな。
ときめきとは別の次元で、心臓がどきどきしてきた。話題……話題を探さなければ。
「緊張してる?」
「はあ、まあ」
そんな私に気を使ってか、洋斗さんは通りすがりにある店の説明をしたり、カーステレオの話題を広げてくれたりと私も話しやすいように気を使ってくれた。
でも私、普段人と話さないから、ずっと会話をしているのって実は疲れる。車の揺れも手伝って、ふわふわと意識がとろけそうになってきた。
「もしかして眠い?」
「えっ、あ、いやその」
危ない危ない。一瞬記憶が飛んだ。
洋斗さんは前を向いたまま、私の手をつかんでいた。
「すげぇ、あったかいもん」
「す、すみません。運転させてるのに」
「いいよ。昨日の今日で疲れてるだろうし。目的地まで寝てなよ」
申し出はありがたいけど、さすがに気が引けるし。
でも、彼は気を使ったのか今度は黙ってしまった。こうなってくると自分からは話題を振れない私。
なんか悪かったなと思いつつ彼を見れば、口元が笑っている。きっと不機嫌なわけじゃないんだろうな。
だったら、話さなくてもいいかな。
そう思えて、彼を見つめながら、とろけていく意識に抗うのもやめた。
これって凄くないかな。
少なくとも私は今まで、一緒にいて話さなくても安心できる人に出会ったことがない。