コミュ障なんです!
「なんか飲むの? おごってあげるよ」
「いえ、結構です」
おごられる理由もないですもん。
手を伸ばした田中さんをシカトする形で、自分の小銭を機械に投入する。
田中さんは湯気の上がったカップを手に持ったまま、私の動作をじっと見つめていた。
「……和賀さんって彼氏いるの?」
……はい?
思わず動きを止めてしまう。
唐突にもほどがないですかね。だって別に楽しく世間話をしていたわけでもなくて、普段から親しいわけでもなくて、今だって偶然出会っただけで。なのにそういうプライベートなこと聞くのってかなり不躾なんじゃないでしょうか。
「いません、けど」
「あ、そう。俺もなんだ」
「そうですか」
そうでしょうね。
「じゃあさ、俺とかどう?」
どうって何が?
怪訝な顔で振り向いたら、田中さんはニヤニヤ笑っている。
「どう、とは?」
「や、俺もフリーだしさ。付き合わないってこと?」
これはどう受け止めればいいんだ?
今は就業時間内。告白には一番向かない時間帯じゃないだろうか。しかも顔には真剣さがない。
加えて私と田中さんの接点なんてこの間の飲み会くらいしかないし、あれで私を好きになったというなら相当のマゾだとしか言いようがない。
つまり、私にだから言ってるわけじゃない。女なら誰でもいいってことだよね?