待たないで
待たないで


「先輩も卒業なんですね」


 一歳下の宮元は、テーブルに頬杖をつきながらそういった。

 宮元のことは知っている。宮元の兄は私の一つ上で、その兄もまた有名だったから。小さい学校出身であり、合同で行事がある際にはよく顔を合わせていた。兄はともかく、弟はやたら人懐こい。

 野球部である彼は、何故ここにいるのか。



「どうしてここに」
「吹奏楽部の連中が、山本先輩がきてたって話してたから」
「あー、さっき見た」



 三年生にもなれば部活は引退である。
 許可をもらって、保健室で小論文をやっていたのだ。そんなとき唐突に宮元が入ってきた。ジャージ姿で「先輩、俺の名前覚えてます?」という。


「宮元」
「せーかい」

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