待たないで



 暑苦しいなと思う。静かでよかったのに、宮元のせいで集中ができない。溜め息まじりに鞄から飲み物を取り出して飲む。

 人懐こいのは知っている。けれど、その活発さが、私は少しだけ苦手だ。人付き合いで参っている私だから、そんなことを思うのだろうけど。

 黙っていればそれなりにかっこいい分類なのかもしれない。



「ねえねえ先輩」
「なによ」
「教室でいちゃいちゃしてたら、入りずらいっすよね」
「まあ。ああ、あれか。斎藤と若狭?」
「あ、知ってるんですか」
「名前だけね」



 カップルなんてどこにだっているし、ところ構わない。相手がいればそれでいい。三年生にもそんな困った人らがいるが
後輩にもいることは知っている。

 教室で二人っきりでいるときは、入りにくい。それを宮元はいっているのだろう。思い出すだけで暑苦しい。暑い。

 扇であおいでいると、いいなあといわれたので少しあおいでやる。



「で、先輩は彼氏いないんですか」
「いないよそんなの」
「俺もっす」
「彼氏?」
「や、違いますよ」


 笑ってそういえばすぐさま否定。
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