待たないで



 宮元の学年は男子より女子のほうが多い。しかも私の学年から下は、一クラスとなっている。密集した教室はさぞ暑いだろう。そう想像する。

 これでは小論文どころではない。風で飛ばないようペンケースを重しにして、原稿用紙をおく。



「年上派ですか」
「うーん。そもそも付き合ったことないし」
「じゃあ年下もいけるってことですか」



 しつこい。
 私は鞄からノートを出そうとする。



「俺じゃだめっすかね」



 私の手が、思考が止まる。



「は?」



 やだなあ先輩、とげらげら笑う宮元。それとは対照的に私は止まっている。何いったこいつ、と。
 ああ、冗談なのだろうとノートを出す。



「好きですよ、先輩」
「はいはい」
「冗談じゃないっすよ。本気で」



 蝉の声と吹奏楽部の練習している音がした。
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