好きを百万回。 〜Revenge at Boston〜
このクソ寒いボストンまでわざわざ旅行?
ご苦労なことだ。
どのガイドブックにも載っている超メジャーなシーフードレストランの名前をあげ、7時に待ち合わせることを約束した。
授業を終え、一度部屋に戻り着替えを済ませてからゆっくりレストランへ向かう。
今日のボストンも氷点下。
ワザとレストランの中ではなく外で待ち合わせた。
Tと呼ばれるボストンの地下鉄を降りて10分ほど遅れて着くと、身体を小さくして足踏みをしながら待っている東洋系の女がいる。
バカが。
下調べくらいして来い。
冬のボストンでは帽子か、コートのフードはマストアイテムだ。
女がこちらに気付いて嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「野波さん!」
鼻にかかった声。
「悪い、待たせたな。矢口」
決して安くはない飛行機代を使って、わざわざ会いに来るとは吃驚だ。
矢口を促し、レストランに入るとすぐにオイスターバーがあり、アルコール片手に生牡蠣を楽しむ白人のグループが目に入った。
珍しそうに矢口が視線を投げるけれど、知らん顔をしてやって来たウェイターに席に案内させた。