透き通る季節の中で
 その日から、一週間後の夜、体の具合はどう? 駿介に聞いてみた。

 元気だよ。明るい声で言ってくれた。

 近いうちに、会おうと言われた。

 私も会いたい。でも……

 仕事が忙しいから、もう少し待って。駿介に頼んでみた。

 わかった。じゃあ、来シーズン、一緒にカモメを見に行こう。咲樹を連れて行きたい場所があるんだ。と言ってくれた。

 カモメが飛来するのは、早くて十一月。

 それまでに何事も起こらなければ、岩手県に行って、駿介と会う。一緒にカモメを見る。

 今度こそ大丈夫。

 二度あることは、三度ない。

 

 駿介と付き合い始めたことを、友達と春子さんに報告した。

 みんな喜んでくれた。






 よく晴れた日曜日の午後、いつもの防波堤に行って、食いしん坊ちゃんの飛来を待った。

 テトラポットに座り、かっぱえびせんを食べながら待っていたところ、食いしん坊ちゃんが私の方に向かって飛んできた。

「食いしん坊ちゃんのおかげで! 彼氏が出来たの! ありがとね!」
 大声で叫んで、食いしん坊ちゃんにも報告してみた。

 喜んでくれているのか、食いしん坊ちゃんは、甲高い鳴き声を上げながら、私の周りを飛び回っている。

「お礼だよ! どんどん食べてね!」
 
 大空を自由に羽ばたいている食いしん坊ちゃんに向かって、かっぱえびせんを投げた。

 相変わらず、かっぱえびせんのキャッチが上手。

 幸運のカモメちゃん。どうもありがとう。



 この日から、食いしん坊ちゃんの姿を見ることはなかった。

 もうすぐ春。

 北に移動したのだと思う。

 食いしん坊ちゃんは……きっと……



 また、秋に逢いましょう。
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