石川くんにお願い!
あれから1週間が過ぎた。
石川くんとの関係も変わらぬまま。
要くんはここ数日姿を見てないし、広大くんとはたまにアプリで少しやりとりするくらいだった。
なんにも解決しない。
大丈夫なのかな…これは……
「朱里。私先に帰るよ」
「あ、うん。お疲れ様。つーちゃん」
講義が終わってカバンの中に参考書をしまっていると、先にすべて終わらせたつーちゃんが慌てた様子で去っていく。
あの様子はデートなんだろうな…なんて思いながらわたしも席を立った。
ブラブラと大学内を歩いていると、石川くんの取り巻き達が何やら円になって話をしている。
「本当に最悪なんだって」
……いい話ではなさそう……
石川くんのことかな……それとも私か…
なるべく関わらないように、忍び足で隣を通り過ぎようと試みていたが
「…顔が可愛いだけで全然ダメだったらしいよ。やっぱり石川くんがいいよね……」
状況が変わった。
石川くんのことじゃないの??
頭に浮かんだのはそんな疑問。
そして”顔が可愛い”で連想される人物が、私の中で1人。
…まさか…
なんて思いつつ今度はわざと歩幅を狭くしてゆっくりと歩く。
「男でヘタレはないわぁ」
だけど話を聞けば聞くほど色んな情報がごっちゃになって、わからなかった。
これ以上不自然にそこにいても仕方ないので考えながらまた進む。
ダメだ。…どうも要くんにたどり着く。
私の可愛いリストが少なすぎるのか…いやだけど石川くんの取り巻きが噂するくらいならそうなんじゃないか…
……最近石川くんの側にも現れなかったから余計に心配。
「………」
今日はバイトもないし、少し探してみよう。
要くんって目立つ方だし、周りに聞いてみたらたどり着けるかも。
ついにこんな無謀な考えにまで発展した。
会えるかな……要くんは割と目立つ方だと思うんだけど。
キョロキョロと彼を探しながらキャンパス内を歩き回った。
だけど石川くんの側にいない要くんを見つけるのは、思いもしないほど難しく中々会えない。
まぁ…普通はそうなんだよ。
師匠は取り巻きの女の子達が必ず噂してるし、それでいて目立ちすぎて、高確率でわかるんだけど。
「…無理…かなぁ…」
こうなったら門の前で待ち構えてる方が確実かも知れない……ああ…でももう帰ってたら意味はないよね…
そんな時ふと広大くんのことを思い出した。
そういえばサークルの関係で、石川くん情報も詳しいし、なんなら要くんと同じ講義取ってる人が後輩でいるかも知れない。
そしたら今日に限られず彼に会う術が見つかるかも!
どうしてもっと早く思いつかないんだ…と自分を責めながら広大くんにメッセを送ってみた。
一応保険をかけるように門の前に立つ。
いや…こうしていたらストーカーみたい…何してるんだろう。私は。
周りの目を気にしながら15分くらい立ち往生していると広大くんから返事がきた。
”経済学部の子らに聞いたら落ち込んでた様子で、教室出て行ったって。更に裏庭に歩いていくのを見た子がいるみたいだよ。”
…ああ…広大くんってどこまでいい人なの。
本当にありがとう!
とこちらも返して、すぐさま裏庭の方へと向かう。
まだいるかはわからないけど……
行ったところでどうするなんてことは全く考えてない。だけどいけばどうにかなる気もする…
自分のいた場所から裏庭まで10分前後
人気の少ないベンチに金髪の男の子が座っている。あんなに自然で綺麗な金髪は、正しく要くんしかいなかった。
「…要くん…」
おずおずと話しかけると、震える彼の肩。
「…ちっ…なんだよ。またお前かよ…」
いつもと同じ言葉遣いなのに、あきらかに要くんに元気はなかった。