イジワル御曹司に愛されています
都筑くんが立ち上がり、ゴミ箱に缶を捨てた。


「俺、会社戻らないと」

「じゃあ私、もう少し挨拶回りしてくる」

「戻る気かよ」

「だって、仕事だし…」


露骨にあきれたため息をつかれてしまう。


「まあ、好きにすりゃいいけどさ。次絡まれたら自力で逃げられるんだよな、まさか?」

「そんな何度もないよ、あんなこと」

「そういう甘い考えだから、つけ込まれるんじゃねーの」


なんだと!


「だからって人の身体をさわっていい理由にはならないじゃない」

「正論で身が守れるんなら、そう叫んで回れば?」

「なんで都筑くんって、私にばっかり厳しいの?」


ついつんけんした声が出た。

都筑くんが怪訝そうに眉をひそめ、ベンチの上の私を見下ろす。


「俺は誰にでもこうだよ」

「嘘、未沙ちゃんにだって、もっとずっと優しく見えた」

「え、また木村の話?」

「そうじゃないけど!」


ああもう。自分でもなにが言いたいのかわからないのに、かき回さないでよ。でもずっと聞きたかった。なんで私なの?って。


「都筑くんだって同じなんじゃないの。私がぼんやりしてるから、からかいやすそうだと思ってるんじゃないの」

「あんな変態と一緒にされるとか、マジ不愉快なんだけど」

「じゃあなんで私ばっかり?」

「ばっかりじゃねえって言ってんだろ、お前が俺を嫌ってるからそう思うんだ」

「そんなの…」


えっ?

とんでもないことを聞いた気がして、追及の手が止まった。
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