イジワル御曹司に愛されています
え! なんでわかるの!

目を丸くした私に、いかにも楽しそうに松原さんが喉で笑う。


「そういう子が"戻って"くると、めちゃくちゃ素直な目するようになるんだよね。僕そういうのたまらなくて」

「はあ…」

「実は僕、昔高校教師を目指してて、実習も行ったし採用試験も受けてる」


にやっとする顔に本気を感じる。まさかの指導者目線だった。


「家の事情ってことだったけど、腐らないといいな」

「どうなんでしょう、少し心配で」

「友達なら、話聞いてあげたらいいじゃない。僕はもう縁がなくなっちゃうかと思うと、本当に残念だ」


友達。

そんな関係だったなら、もっと簡単だったのに。なんでも話して、なんて言えて、一緒に悲しんだり嘆いたりできて。

私は今、どこまで踏み込んでいいのか、全然わからない。


「あれっ」


席に戻ったら、メールが一通来ていた。セミナーで登壇してもらう先生からだったので、原稿にかんする質問かな、と開いて、私は青くなった。


「ま…松原さん」

「どうしたの」


ただごとじゃない気配を察したのか、松原さんがこちらにやってきた。私の肩越しにPCをのぞき、はっと息をのむ。

先生からのメールは、登壇を見合わせる旨を、怒りに満ちた文面ではっきり伝えてきていた。

あと2か月しかない中で…嘘でしょ、としか言えない。この先生が抜けたら、ディスカッションが成り立たない。

マウスを握る手が震えた。

せっかく都筑くんが実現してくれた場なのに。いなくなっちゃうってわかったとたん、これ。合わす顔がないよ。

嘘でしょ…。

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