向日葵の下で口付けを
調理をしていると、突然背中に温もりを感じた。

「ロル。」

耳元で愛しい声に自分の名前を呟かれると、なんだかくすぐったい気分になる。

けれどもどこか寂しげな声に、そっと小さく息を漏らした。

「お店、大変でしょ?だから、私も手伝いたい。そしたら、昼間もロルと一緒にいられるだろうし...」

エノは詰まりながらそう言った。

私を抱きしめる腕にどんどん力が入っていって、少し苦しいのはそのせいか、それとも...

「ありがとう、エノ。でも大丈夫。」

極力明るい声で、エノを苦しめない様に。

そうしたつもりだったけど、声は少し震えて吐息だけがたくさん空回りした。

「でも、ロルばっかりに無理はさせられないよ。いくら旅人だからって言っても、さ。ほ、ほら!バイトを雇ったって言えば...」

今にも泣きそうな声でエノは言う。

私まで不安になってどうしようもなくなって、無力さを自覚するのが何よりも怖かったのに。

「大丈夫だって言ってるじゃん!何なの、エノは私達の関係がバレたっていいって言うの?これはいけない事なんだよ!」

つい、声を荒らげてエノに当たってしまった。

ごめん、と謝ろうとした時にはエノの方が先に謝っていて、私を抱きしめていた腕はもうここにはなかった。
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