恋愛指南は乙女ゲームで
「けどな、一つ大きな問題があるんだ」

 俺はそう言って、ぐるりと教室内を見た。

「女子ってのは、通常のデフォルトがこんなんなのか?」

 言いながら、今野の鼻先にスマホのイケメンアイコンを突き付ける。
 今野は素直に、じーっとスマホを見、ややあってからスマホ越しに俺に視線を転じた。

「いや政重。これは男だぞ? まさか男と女の区別もついてなかったんじゃないだろうな」

 真面目な顔で、アイコンのイケメンを指して言う。

「違う! いくら何でもそれぐらいわかるわ! つかそんな区別もつかないようなら、それは最早イラストレーターの技量の無さだ。そうでなくて、このゲームの主人公だよ。多分男はそれぞれ性格があるんだろうけど、女目線なのだから、主人公の性格はずっと同じなのだろ? てことは、世間的な女ってのは、こういう性格ってことか?」

「う~ん、どうかな。ていうか、そこまで考えるなよー」

 途端に今野は俺から視線を逸らす。
 なるほど、こいつはそこまで考えずに、俺に政子を押しつけたわけか。

「てめっ! ちゃんと自分で確認してから人に勧めろ! 女の見方が変わるわ!」

「えっそんなに? でも変わったんならいいことじゃん」

「馬鹿野郎。悪いほうにだ」

「あれっ。何で?」

 思いもしなかったことなのだろう、今野は豆鉄砲を食らった鳩のようにきょとんとした。
 俺はイケメンアイコンをタップしてゲームを起動する。
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